ノミの脅威はどれぐらいなのか

ノミ、その危険性とは？
ノミとはいったい何なのか？

ノミは、翅を持たないノミ目昆虫の一種です。 宿主の血液のみを摂取する寄生虫であり、吸血する能力を持ち合わせています。 2,000種以上のノミが存在し、数少ない種類の限られた宿主だけを選び吸血をし進化してきました。食性に露稚児のみをするノミは、ヒト、イヌ、ネコのほか、ネズミや鳥など特定の動物だけを吸血するノミも存在します。

ノミは、他の寄生虫が翅を使い宿主へ寄生するのとは違い、エサを見つけるために飛び跳ねなくてはいけません。飛びは跳ねる、というよりかは、ジャンプすると言った方がいいでしょう。というのも、ノミは「超高層ビルを一挙に飛び越える」ことができる動物界のスーパーヒーローなのです。 

ノミは通常1.5～3ミリ程度の大きさだが、垂直方向におよそ17㎝、水平方向におよそ30㎝以上ジャンプすることができます。 これは、身長180cmの人間が高さおよそ48ｍ、水平方向におよそ90ｍを跳ぶのに相当します。 昆虫のオリンピック選手でこれに匹敵するのはアワフキムシぐらいでしょう。しかし、ノミの凄さは跳躍力だけではありません。 ノミは、ある場所から別の場所に移動するために必要なときには、1センチ足らずの跳躍も正確に行うことができるのです。

ノミは足が発達しているが、足の力だけでジャンプしているわけではありません。 彼らは胸膜にレジリンというタンパク質を蓄積している。この非常に伸縮性の高い物質を呼び水にして、バネのように使うことで、このような驚くべき跳躍をすることができるのです。

しかしすべてのノミがジャンプするわけではなく、ノミが好む宿主により、その状況は大きく変わります。跳躍力のあるノミは大きく「糧」となる宿主へ跳びつきます。小さく垂直飛びへの跳躍力が少ないノミは翅を持つ飛躍動物や、巣作りをする動物などを宿主として選びます。

ノミ：イラっとするノミの人生
このようなトリビアもさることながら、ペットの飼い主は嫌が故にもノミと日常的に付き合っていかなければならないのが現状です。 ペットケア市場では、ノミ駆除・予防商品がほとんどを占めています。 販売量を見る限りでも、このノミ対策の商品が他の商品を上回ることはないでしょう。獣医という現場で日々を過ごしている人たちに話を聞くことで、このノミに対する現状をより深く理解することができます。 

ペンシルバニア州にあるローンハースト・アニマル・ホスピタルの獣医師、アダム・デニッシュ博士は、ノミは犬にとってさまざまな問題を引き起こす可能性があると言い、「ノミの唾液に対する特定のアレルギーであるノミ咬傷皮膚炎は、その中でも最も一般的なものです」だと付け加えます。 

「ペットにひどい痒みを引き起こし、いつも引っ掻くようになります。掻き続けることによって皮膚が割れ、何らかの感染症を起こすかさぶたができることがあります。体表のどこへでも発生する可能性がありますが、特に、お尻、尻尾の付け根が最も一般的な個所だとされています。かかりつけの獣医師が対処してくれるでしょう。このアレルギーや感染症の治療に加えて、やらなくてはいけないことはノミの駆除となります。」

ペットは、皮膚の炎症などの外見的な問題だけでなく、ノミに刺されたり寄生されることにより、体内トラブルを抱えている可能性もあります。

ノミによる体内感染

サナダムシは、ノミによって引き起こされる寄生虫です。これらの寄生虫はノミを介してペットへ感染します。

"サナダムシ "はノミの中からその一生を始め、ペットの中で大きな寄生虫に成長します。サナダムシは、小さい時には1.3cm、最大で30cmぐらいの長さの分節状の寄生虫です。見た目はウジ虫に似ており、体重減少やお尻へのかゆみを引き起こしますが、動物病院にて治療することができます。

ノミ刺され貧血は、ペットのノミ刺されに関連する別の病状です。 子犬や子猫のような幼い動物や小動物が大量のノミに刺されると、ノミの過剰な吸血によって赤血球数が減少し、貧血を引き起こします。この状況は医療上、緊急事態であり、治療をせずに放置しておくと命に関わる危険性がでてきます。幸いなことに、動物病院での迅速な治療があれば、最悪の事態を避けることができ、また、症状を最小限に抑えることが可能となります。

季節とノミの関係

ノミ対策には、居住地の気温が大きく影響します。氷点下の地域では、ノミは凍死するか、暖かい気候が戻ってくるまで休眠状態になります。 しかし、温暖な地域に住む人たちは、北東部や北西部の厳しい冬を持つ地域とは違い、一年中ノミと付き合わなければならない可能性があります。

「ノミは、4月から10月の暖かい季節を通して、野生動物に寄生が確認されており、周辺の茂みなどで寄生のチャンスをうかがっています。一度ペットに寄生すると、ノミはこの寄生場所を安全な場所であると認識し、人の衣服に付着したりして、家の中へと侵入してくると考えられます」とデニッシュ博士は主張しています。

肌寒くなってきても、ペットの飼い主さんはノミに注意する必要があります。

ノミは春と夏だけの問題だと思っている人が多いようですが、デニッシュ博士は秋にも注意するようアドバイスしています。「9月から10月にかけては、涼しい気候のためにノミが家やペットなど暖かい環境に入り込むため、診療所で多くのノミ問題に出会います。ノミは屋内では冬を越すことができますが、屋外では寒さで死んでしまいます。また、飼い主の多くは、ノミ駆除・予防の薬を早期にやめてしまうことが多いようです。1年を通してノミ対策をお勧めしますが、どうしてもやめてしまう場合は、霜が2回降りるほどの寒さが確認できるまでは続けることをお勧めします。

ノミは人間にも健康被害をもたらします

犬や猫に寄生するノミは通常人間には寄生しませんが、家庭内にて深刻な健康被害を与える可能性があります。

「ノミは人に吸血することがあっても、実際に皮膚や髪に寄生することはありません。ノミは、ペストや猫ひっかき病など、いくつかの病気を人にうつす可能性があります。これらの症状が見られる場合は、かかりつけの医師に相談するように」とデニッシュ博士は助言しています。

ノミ駆除 - 専門家が必要なケースもあります

ノミが家に充満し始めたら、近所の駆除業者に専門的なサポートを依頼しましょう。

ペンシルベニア州ブルーベルにあるカスタム・ペスト・ソリューションズの社長、トーマス・シルべストリーニ氏から、駆除業者が家の中のノミの蔓延を食い止めるために使う戦略をいくつか紹介していただきました。

彼によると、資格のある専門家は、ノミが最終段階に脱皮して性的に成熟するのを阻止するために、殺虫剤と成長調整剤からなるエアゾール処理剤をあらかじめパッケージしたものを頻繁に採用していると言います。この処理剤は、成分とテストの結果、ノミのライフサイクルを断ち、ノミの繁殖過程を断ち切るというものです。

プロの駆除業者が使用するノミ駆除用の薬剤のほとんどは無害ですが、処理後はいくつかの安全対策が必要です。

ラベルの指示通りに使用すれば、カーペットのある場所でもない場所でも、個装済みのエアゾールを使用しても安全です。ですが、一般常識も視野に入れましょう。処理をしたエリアに立ち入る場合、特に薬剤が乾燥していない場合には靴下・靴の着用を義務づけるなど、とくに子供などには気をつけましょう。ただしこの場所にペットを連れて行くのは全ての薬剤が乾燥してからにするべきだと彼は付け加え、「ペットの足裏は一般的には比較的頑丈で、通常では殺虫剤は足裏から吸収されることはありません」としています。

よく使われる製品に、建物内使用のスプレーとして「プレコア2625スプレー」と「PTアルパインノミベッドバグ駆除剤」が挙げられますが、他にも多くの製品があります。 シルべストリー二氏によると、安全性を確保するには、表示された散布量を守り、完全に乾くまで子供やペットを処理されたエリアに近づけないようにすることだそうです。

ノミの治療では、ナンキンムシなどの寄生虫感染とは異なり、リネン、枕カバー、衣類などの持ち物を処分する必要がないのが通常です。 ノミは、高温乾燥機などで死滅しますが、濡れた寝具や衣類は、新しいノミが好ましい繁殖場所となるので、すべて完全に乾燥させることがとても重要となります。

破棄しなくてはいけないものはノミが大量に発生し、被害を受けたものだけです。シルベストリーニ氏によると、薬剤散布後数日してから掃除機をかけると、虫の死骸が取り除かれ、カーペットの繊維が浮き上がって、残っているノミが毒を吸収しやすくなるそうです。

しかし、1回の駆除ではノミを駆除しきれない場合があります。

駆除後、飼い主さんは辛抱強く我慢しなくてはいけません。ノミの卵の蔓延度合いに応じて、最初の駆除後、長い場合1ヶ月後に卵の孵化が考えられます。ノミの駆除を一気にしてしまうのは非現実的なのです。

駆除業者やペットケア科学者がノミの駆除に大きな進歩を遂げたにもかかわらず、ノミもまた何千年にもわたって彼ら自身の種の進歩を遂げてきたのです。

「ノミは、ペットが病気になる大きな原因です。ノミはどんなに小さくても、厄介なだけでなく、危険な存在なのです。おかげさまで、獣医が承認した素晴らしいペットのノミ駆除・予防、または治療薬が出回っています。ですが、治療するよりは予防することが望ましいということを心に留めておいてください。」とデニッシュ博士は言います。