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猫が虫を食べるのは安全か?

 2022年12月9日 著者ジェームズ|
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猫が虫を食べても安全か?

犬と猫の違いはあきらかで、私たちはこの2種類の動物の違いを良く知っています。「犬は人間の最良の友」と言われ、人に飼いならされているのに比べ、人と猫の間には少し曖昧な関係がありそうです。食事と寝床を用意し、それを快く受け入れた猫達は、「ネズミの世話はするけど、それ以外は知らないよ」といった様子がうかがえます。

家庭内に溶け込んでいるようなイメージを持つ犬の写真とは対照的に、猫の写真には野生の肉食獣が潜んでいるように見えることがあります。猫は、ジャングル(砂漠)より抜け出すことに成功し、人間世界にうまく入りこむ事が出来ました。しかし、私達人間が猫達同様うまく適応できているかと言われると、考え物です。どんなにかわいい子猫でも、物陰に隠れ、通りすがりの私たちの足にとびかかるような行動をしたり、外出ついでの狩りの成果「プレゼント」を玄関先のマットやカーペットに持ってきたりします。

猫は生まれつきのハンターです。追いかけ、捕まえ、静かにあとを付きまとう事が本能的に好きなのです。エサがたくさん入ったフードボールがあっても、この欲求はとどまることを知りません。室内で生活する猫にとって、次に目を向けるのは室内にいる昆虫・虫です。

なぜ猫は虫を追いかけるのか?

生きている昆虫や虫を追いかけるのは、棒に付いた羽や鈴のおもちゃを追いかけるのとは比べ物にならないほど楽しいものです。こういったおもちゃは猫の「内なる獣」の本能に呼びかけず、猫が自然と虫を追いかけてしまうのは仕方のないことなのでしょう。では、猫が昆虫や虫を捕まえ捕食してしまうことは健康にどんな影響を与えるのでしょうか。

獣医師であり、オハイオ州立大学行動衛生学臨床助教授のメーガン・ヘロン博士によると、猫の狩猟本能は飢えとは関係ないことが多いと言います。

猫は「完全肉食動物」であるため、少数の昆虫では必要とされるタンパク質を補うことが出来ないからです。 

完全肉食動物と呼ばれる真の肉食動物は、生存の為に動物を主食とする栄養源にのみ依存します。ミンク、メガネザル、イルカ、アザラシ、セイウチなど陸上・海洋動物では彼らも完全肉食動物に属します。数多くの蛇や両生類、サケ、ニジマス、タカ、ワシ、ワニなどは哺乳類以外での完全肉食動物です。

猫は成長過程でたくさんのたんぱく質を必要とします。糖分は主に糖新生(炭水化物ではなくタンパク質をブドウ糖に変える過程)によって得ています。コロラド州フォートコリンズの獣医師、ジェニファー・コーツ博士は、「野生の猫はネズミ、鳥、ウサギ、さらには蛇を含む生き物を狩ることにより、たんぱく質を得る」と主張し、「質の良い低炭水化物のキャットフードを規定量与えていれば、猫にとって必要なタンパク質は摂取できているはずです」と言っています。

「虫を狩る」という行動は、生物学的というよりは、行動学的な起源であると思われます。

ヘロン博士によれば、「猫の脳は、小さく素早く動くものを追いかけるようにできており、虫を追いかけ捕食することは楽しみであり本能でしょう」と述べ、「遊びを通しての狩り・捕食行動は猫にとって本能的な活動であり、イヌ科の動物ほど完全に家畜化されておらず、猫にはまだまだ本来の性質が残っているのです」と言います。

では、この行動によって虫を食べると猫が病気になるのでしょうか?


 
虫の体内寄生虫

ケイティ・グレジィブ博士(DVM)は、「虫の摂取による内部寄生虫については(さほど大きな)問題ではない」とし、「虫を食べる事にほとんどリスクは伴わない」としています。

猫に感染する寄生虫を媒介する昆虫には、フィサロペテラやお腹の虫などがいますが、そのような例は極めて稀です。

猫の消化管は、虫の摂取によって刺激されることがあります。下痢や嘔吐がその例となります。症状がひどい場合や、1~2日で収まらない場合は、獣医師に相談しましょう。

しかし、コーツ博士によると、猫の被毛に侵入したり住み着いたりする一部の昆虫類は、間違いなく問題を引き起こす可能性があるという。「マダニは厳密には昆虫ではありませんが、サナダムシや貧血など、マダニが媒介する疾患を人や動物に広げる可能性があります。ハチ刺されやクモ刺されは間違いなく、局所的あるいはアナフィラキシー的なアレルギー反応を起こす可能性があり、多くの場合、獣医師による治療が必要です」そして、「言い換えれば、猫が”噛みついて”いる昆虫や虫より、猫に”噛みついている虫”の方が問題なんです」とグレジィブ博士は続けます。


殺虫剤の付いた虫を食べるとどうなる?

屋内に虫が入らないように注意はしていても、全てというわけにはいきません。殺虫剤などで駆除している方もたくさんいると思います。飼い主さんの中には、殺虫剤を受けた虫をペットが食べたらどうしようと心配される方もいるでしょう。ほとんどの場合、心配には及びません。

グレジィブ博士は「死にかけている虫・昆虫にはごく微量の毒素しか残っていないことが多く、それによって飼い主がペットの健康被害に気付くことはまずない」としています。

しかし、猫が殺虫剤に直接触れるには大きな違いがあります。家の周りで殺虫剤や農薬を使う際には最善の注意が必要です。使用する薬剤の取り扱い説明書や、ネットで調べるなどして確認するのが良いでしょう。

また、グレジィブ博士は、ピレスロイドは猫によっては発作や激しい震え、高熱を引き起こす可能性があるため、飼い主は殺虫剤のラベルをよく見て、この成分が含まれていないことを確認するようにアドバイスしています。

一方でゴキブリ駆除のエサの使用では「何例か見たことがありますが、軽い胃腸への症状がでるぐらいで、ほとんど影響はない」と付け加えています。

ペットが誤って農薬などを摂取したと思われる場合は、かかりつけの獣医師、又はASPCAなどの毒物管理ホットラインに連絡するすようにとグレジィブ博士は続けています。連絡をする際は、摂取してしまった農薬の情報や有効成分などを記載したボトルや取り扱い説明書など、製品に関する情報をできるだけ多く用意しておきましょう。情報が多ければ多いほどペットを助けるのに役立ちます。


猫は狩りをしたいと思っているか?

猫達は日々、狩りをしたいという本能が満たされず、それゆえ虫を狩るという行動でその穴埋めをしているのでしょうか?それともただ、子猫の時のような行動を繰り返しているだけなのでしょうか?

「猫は、昆虫で狩りの代わりをしていると思われます。子猫は一般的に活発なので、成猫より狩りをしているように見えますが、実際はただの遊びの場合が多いんです」とグレジィブ博士は述べています。

「昆虫狩りの様子を観察しているとわかると思いますが、食べる事もなく、ただただ追いかけたり、はたいたり、時にはただ、くわえたりしているだけの事が多々あります。100%確証はありませんが、暇つぶしに狩りをしていると思われます」。

室内にいる虫や昆虫にとっては悲報ですが、楽しみながら狩りをするということは、猫が猫であるために必要な事なのです。

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